SFTSの概要と、当院での発生状況をご報告します。
ダニ媒介性出血熱感染症であるSFTSは、2009年に中国で発生し2011年に原因ウイルスが特定されたました。2013年に国内第1例目の患者が確認されましたが、すでにその前年の2012年、愛媛県南予で感染し亡くなられた方がいたことが後に判明しました。
以降、西日本を中心に患者数は増加し、東日本へ拡大する傾向が続いており、同様にペットの罹患も2013年に確認されてから増加・拡大が続いています。
直近の発生動向は以下で確認できます。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-idwrs/7415-sfts-nesid.html
SFTSはで哺乳類(イノシシやアライグマ等の野生動物に加えて外にいるネコ)とダ二の間で感染経路がなりたっています。
当院では疑診例について、国立感染症研究所に遺伝子検査と抗体検査を依頼しています。2021年に第1例を確認して以降、今日までに猫10例、犬1例での発症が判明し、猫の致死率は60%と国内の報告に合致する極めて高い致死率となっています。また凍結保存していた検体を用いた抗体検査により、2019年に猫1例での感染が確認されており、この頃にはすでに大洲市近辺に感染が拡大していたことが判明しました。
いずれの感染症例も大洲市、内子町、八幡浜市にお住まいで外に出る飼育をされています。特に長浜町での症例数が半数程度を締め、肱川河口の両岸は濃厚感染地域と判断しています。
また国内で最初期に患者が確認された宇和島市において一つの動物病院で年間に10頭以上の発症が確認されており、大洲市近辺での感染拡大はこれから悪化していく可能性が高いと推測されます。
院内検査でSFTSを疑うことは可能ですが、SFTS発症に特徴的な検査の異常を示さない症例も半数近くいるため、SFTSを院内で否定することは不可能です。従って特に外に出るネコちゃんが発熱し元気がない場合、SFTSを含めた複数の感染症を疑う必要があるため防護衣を着用し診察させていただいております。
現時点ではペットへの有効な治療法はなく対症療法しかありません。(なおSFTSはサイトカインストームという重篤な病態を呈しますので、他のウイルス感染症と異なりネコインターフェロンの使用は禁忌の可能性があります。)人への感染リスクは最長で1ヶ月ほど続くことも判明しており、症例が元気になったあとも人への感染リスクは続いていることにも注意が必要です。
SFTSに感染しないためにはダニとの接触を避ける他に有効な手段がないと考えられています。従って外に出るペットの感染リスクを無くすことは困難です。また 発症したワンちゃんネコちゃんから飼い主様と動物病院スタッフに感染する事例が続いてます。
ペットから人への伝播はダニを介するか接触感染でおこります。特にネコちゃんの唾液、尿、糞、血液からは極めて多量のSFTSウイルスが検出され、知らずに体に触れた人が感染・発症を逃れられるかは運次第の状況と考えられます。
ダニ予防薬を使用していない症例数の方が使用している症例より多いため、予防薬の使用により一定程度はペットの感染リスクが低減すると思われます。ダニは年間を通して生存しているため、外に出るワンちゃん(たとえ庭にしか出ないとしても)には年間を通してダニの予防を欠かさないようにしてあげてください。ネコちゃんは外に出ることで他の致死的なウイルス感染症、猫同士の喧嘩、事故にあうなどで平均寿命が半減しかねないのが現状です。ぜひ外に出さず、生涯をのんびり家の中で愛でて頂きたく思います。