愛媛県の他の地域と異なり、昔から伝染病、寄生虫感染が多発する地域です。
　完全室内飼育の場合に必要な予防は限定的ですが、外に出る場合はワクチンと
　ダニ・ノミ予防は必須となります。
　ダニ、ノミ、消化管内寄生虫は人にも感染し、別の伝染病をもたらす危険があります。
　南予では特にダニ感染による重症熱性血小板減少症候群（SFTS）が重要です。

混合ワクチン　　飼育状況（頭数、完全室内飼育かなど）により推奨が変わります。

• 犬　完全室内飼育・・・5種コアワクチン　数年毎または抗体価低下時に接種
  　　散歩に行く・・・コアワクチンに加えレプトスピラワクチンが必要
  
• 猫　完全室内飼育・・・3種コアワクチン　数年毎を推奨
  　　外に出る・・・コアワクチンを毎年接種、猫白血病ワクチンを検討
  

フィラリア症

• 犬でも猫でも感染します。春から12月までの予防が必要です。
• 室内飼育の犬でも猫でも感染例があります。

ダニ・ノミ予防　

• ダニ　外に出る場合は一年中の予防が必須です。冬も死滅しません。
  　　　マダニ媒介性感染症・・・SFTS:犬・猫　バベシア症：犬
• ノミ　春から秋まで。室内外でも網戸越し、ネズミ経由で侵入する場合があります。

重症熱性血小板減少症候群（SFTS）

•  当院で2021-2022年の間に、10頭の症例を確認しました（国立感染検PCR検査：猫9頭、犬1頭）。
   南予全域がSFTSの濃厚感染地域であることを認識する必要があります。
• SFTSを発症した猫、犬から人への感染事例が全国的に続いています。
  特に発症した猫からのウイルス排泄量は膨大で、全ての体液にウイルスが含まれるため
  猫から人が感染するリスクは極めて高いことが判明しています。
  致死率は人：20％、猫：60％、犬：30％程度あり、動物に対し有効な治療法はありません。
  
  猫ちゃんの飼い主様へお伝えしたいこと
  
• ダニ予防薬を使用しても外に出る限りは感染リスクをゼロにすることは出来ません。
  
• 感染した他の動物（特に猫同士のケンカ）からも感染します。
• 完全室内飼育を徹底することで感染する可能性はなくなりますので、
  室内でのんびりと生活させてあげてください。

バベシア症

• 昔から南予で多発する、マダニが吸血することで犬に感染する伝染病です。
• 赤血球内にバベシア（B.gibsoni)が寄生し、赤血球の破壊による貧血と黄疸を呈します。特に免疫介在性溶血性貧血と類似した病態を呈するため鑑別が必要です。
• 治療法は複数ありますが、いずれも1ヶ月以上の長期間の内服を行います。
  治療を行っても必ず体内から駆虫できるとは限りませんので、感染しないことが
  とても重要となります。
• 年間を通じてマダニの感染は起こります。そのため、予防薬はいつの時期でも切らさずに使用する必要があります。
  予防薬が効いている場合、マダニに吸血されてもバベシアが寄生する前にマダニが駆除されるため、感染するおそれは極めて低くなります。

レプトスピラ症

• 南予全域で散発的に発生する犬と人の感染症です。
  肝炎と腎炎を特徴とし、黄疸を呈する場合の致死率は極めて高くなります。
• ネズミの尿とそれに汚染された土壌・水から皮膚や口を通じて感染します。
  完全室内飼育でも室内のネズミから感染した事例があります。
  
• 感染リスクを下げるため湿っぽい環境を避けること、発症を防ぐ可能性を高めるためワクチンを接種しておくことが重要です。
  
  
• 当院はこれまでに山口大学、共立製薬、京都微研と共同疫学調査を行い、
  南予で5種の血清型が存在することを確認しました。
• 残念ながら2022年時点ですべてを含むワクチンはありませんが、飼育状況と生活環境に
  合わせてより適切なワクチンをご提示します。
  
• 猫も感染しますが発症しません。しかし感染源になっている可能性は示唆されています。

猫白血病ウイルス感染症、猫エイズウイルス感染症

• いずれも唾液、ケンカ、交配などで感染します。
• 親猫が感染している場合、仔猫が感染する場合もあります。
• 感染性は高くないウイルスですが、外に出る場合は感染リスクが上昇します。
• 猫白血病感染症にはワクチンがありますが、猫エイズ感染症には2023年でワクチンはなくなります。
  
  
• いずれも感染している猫との接触がなければ感染する可能性はありません。
• 同居猫が複数頭いるが検査をしていない場合や、新たに別の猫の飼育を開始する場合には
  すでに感染していないか判断するために血液検査を強くお勧めします。